ラブライブ!サンシャイン!!と海の話
海ははじまり。
いつでも見える。
うれしいときも、かなしいときも。
なにかをはじめる時、いつだってここだ。
ラブライブ!サンシャイン!! 5周年展示会-Pieces of Aqours- より
思えば、全ての始まりは海でした。
Aqoursの始まりはいつも海でした。
始まりというのは、最初だけではありません。
彼女たちは、前に進めなくなった時にはいつも海を訪れます。
高海千歌がスクールアイドルを始めたくて苦心していた時も、桜内梨子がピアノをする理由を探して海の音を求めた時も、東京で立ち塞がったゼロに打ちひしがれた時も、奇跡の波を起こすことができず焦った時も、学校説明会のライブで失敗してこの先に悩んだ時も…
彼女たちはいつだって海を訪れ、古い自分たちを終わらせ、新たな始まりを迎えました。そしてまたいつか海に還り、再び前を向く。まるで、寄せては返す波のように。
そうして物語の最後には、過去も、未来も、イマも、全てを内包した輝きが、再び海へと還っていきました。しかし、それで終わるAqoursではありません。その輝きに魅せられた少女たちが、あの海でまた新たな産声を上げます。彼女たちの輝きは、繰り返される未来へと繋がったのです。その輝きは、彼女たちが変わっていき、最後にはいなくなってしまったとしても残り続けます。まるで、波にかきけされても、誰もいなくなってしまっても、なんどでも砂浜に刻まれるあのAqoursの文字のように。
海は、形を変え続けるものです。それでも、形を変えても、ぶつかっても、どんなに水が流れこもうとも、海は海です。ずっとそこにあり続けます。
まるで、彼女たちの歩んできたキセキを、消えない物語を、肯定するかのように
Aqoursは、何度壁に阻まれても前に進み続けなければなりません。それこそが彼女たちの美学であり、信念であり、矜恃だからです。壁にぶつかっても、形が変わっても、なんどでも新しく生まれ変わります。なんどでも前に進みます。だって、海はどこまでも広がっているのだから。
そして、それは高海千歌たちだけではありません。
あの時、伊波杏樹たちAqoursも臨界点に立たされていました。
アニメの区切りと3年生の卒業という、物語としての限界。そこに向き合う時が来ていました。
そこで彼女たちは、やはりAqours。前に進むことを選びました。形が変わってしまっても、なんどでも始めようと。
海へと沈むけど 海から昇るんだ 月も太陽も
「未体験HORIZON」より
彼女たちは本気なのです。
めちゃくちゃな願いを
世界中で叶えようって
私たちの野望
「スリリング・ワンウェイ」より
そしてAqoursは再び海を訪れ、歌うのです。
始まるんだ
「DREAMY COLOR」より
しかし、Aqoursの進む先には壁が立ちはだかるものです。
長い長い会えない時間がありました。
それでも、Aqoursは諦めませんでした。
そうしてたどり着いた再開の場所、再出発の場所は、やはり海のステージでした。
過去を糧としたAqoursは、再び産声を上げたのです。
海から再び飛んだ紙飛行機は、太陽に向かって羽ばたき、風に支えられ、青い鳥となって再び約束の地へと降り立ちます。
あの日交わした約束を果たすために。
新たに約束を交わすために。
そんな新しいAqoursがこれから進む先に、どんなことが待っているのか。
そんな、とびっきりのなにかを
楽しみに思わずには、いられないのです。