この瞬間を生きて透き通る青空見渡せば

こことは違う世界。

同じような気もするけど、でもどこか不思議で、ちょっと違う、そんな世界。

そこで僕らは旅をした。

これは、その記憶。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、あの日だ。

0が1になったあの日、僕らは一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

物語を見た。

それは、よく知る物語。

僕の愛した物語。

そのはずなのに、なにかが違くて。

それは、どうしようもなく僕らを突き動かす。

騒ぐ勇気が僕たちの背中を押す。

押すというより、突き飛ばすと言ってもいいかもしれないけど。

それでも、悔みたくなくて、一歩踏み出してみた。

そしたら目の前には眩しく輝く世界が広がっていて。

 

それは夢の海。

 

 

 

 

 

ちゃんと船に乗ったか?

 

確認する彼女たちに返事をするように、僕たちは10を叫ぶ。

 

 

 

 

ヨーソロー!

 

 

 

 

声が響き渡る。

船出の合図だ。

 

 

 

 

 

 

 

今、未来変わり始めたかも!

 

 

 

 

 

 

そう大真面目に言う彼女たちを、大げさだって笑おうとしたけど。

遠くの海に虹が架かったから、苦笑いを浮かべて、「そうだ」とだけ言った。

 

 

 

 

それから、宴をした。

船出の宴。

 

彼女たちは決意を口にする。

 

空も、太陽も、星も。

追いかけ、手を伸ばし、そして、輝いてやると。

 

 

 

 

最後に、彼女たちは高らかに宣言する。

 

 

 

 

 

 

びっくりさせてやると。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、たくさんの「ありえない」を見た。

 

 

不可能を可能にする奇跡の波を見た。

 

知らない力で輝く世界を見た。

 

青く染まる僕たちだけの新世界を見た。

 

青い鳥に自由の輝きを見た。

 

大きな大きな贈り物を見た。

 

永遠とも言える友との最高の絆を見た。

 

信じることで繋がる未来を見た。

 

光の海に架かる虹を見た。

 

虹を越える青い鳥を見た。

 

そして、虹を越える光る風と紙飛行機を見た。

 

 

僕らは驚かされてばかりだ。

それでも、彼女たちは新しい輝きに手を伸ばすから。

その先に待つとびっきりの何かが見たくて、追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでもやっぱり現実は厳しくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海も、船も、風も、太陽も、星も。

 

世界から突然すべてが失われてしまった。

 

真っ暗な世界で、独りでさまよっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、聞こえてきた。

 

 

宙ぶらりんな世界で、声を聞いた。

 

 

 

 

 

ここにおいで

 

 

 

 

 

 

遠くに光が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クジラだ。

 

 

 

大きな大きなクジラ。

共に世界を渡ろうと約束したクジラ。

みんなで名前をつけたクジラ。

 

 

 

 

「クジラに乗ってしまうんだ!」

 

 

 

 

そう言う彼女たちを、僕は馬鹿なことだって笑ったけど。

 

 

 

 

 

 

彼女たちはクジラの上で旗を掲げてニヤリと笑う。

 

 

 

 

 

彼女たちには、本当に驚かされてばかりだ。

 

 

 

声が闇を切り裂いてくれる。

 

 

彼女たちは、まだまだ遠くだけど。

どれくらい遠いかもわからないけれど。

笑顔で明日を語れる世界を謳う。

僕らに立ち上がれと言う。

 

 

未来の僕たちはきっと答えを持ってるはずだから。

 

僕を信じる彼女を信じよう。

 

僕らの作る大きな希望の灯りで、新たな世界への道を照らそう。

 

 

 

 

 

 

 

それから、真っ暗な世界で希望の光を絶やさずいたら。

 

やりきれない僕らの手をつかまえて助けてくれた。

 

暗い世界から引ずり出してくれた。

 

彼女たちは戻ってきた。

 

たとえ世界が壊れていたって、お構いなしに。

 

僕らの心を見つけてくれた。

 

目を開くと、空と海と太陽が、永遠みたいに輝いていて。

 

────────あぁ、なんてキレイなんだ!

 

 

 

僕らは、再び船に乗り込む。

 

帆を掲げ、出航する。

 

それは、夢のような瞬間で。

 

でも、それはつまり夢じゃないってことで。

 

 

 

 

 

 

ヨーソロー!

 

 

 

 

声が響き渡る。

 

また心が躍るような日々を追いかけて、

笑顔の船が

希望の帆が

自由の旗が

勇気の風が

夢の海を突き進む。

 

 

番号を叫ぶ彼女たちに返すように、10を叫ぶ。

 

 

サラサラ流れる風が僕らを誘う。

 

水平線を目指して船は往く。

 

これからも夢のカタチは変わっていく。

 

願いは夢に、夢は言葉に、言葉は約束に、約束は現実に。

 

そうやって今までも彼女たちは進んできた。

 

変わってしまった世界でここにいる、変わらないみんなと新しいみんな。

そして、これから出会うみんなと昔ここにいたみんな。

想いを乗せて彼女たちは進む。

 

 

 

変わり続けるAqoursの、変わらない輝き。

 

すべてが変わってしまっても、Aqoursは輝き続ける。

波にかき消されても、何度でも砂浜に刻まれる、あのAqoursの文字のように。

 

 

 

 

何一つ諦めずに走り続けて繋がった未来。

その先に待つものが何なのか。

彼女たちが見せてくれるとびっきりの何か。

それが楽しみで楽しみでたまらなくて。

 

 

どうやら僕はまだ、彼女たちの物語を見ていたいようだ。